「遅そいぜ〜、ルルーシュ!今日はリヴァル様のとっておきの情報があるんだぜ?」

教室に入るなり悪友でもあるリヴァルが声をかけてくる。

「何だ朝から?」
「もうちょっと興味示せよなぁ〜」
「すまない。何だ?リヴァル。その情報とやらは?」

つまんなそうに言うリヴァルにルルーシュは話を合わせる。

「おッ!聞いてくれるか。ルルーシュ!そうこなくっちゃ。」
「で?どんな情報なんだ?」

リヴァルのはしゃぎ振りにルルーシュも少し興味を示した。

「なんと!あのナイトオブラウンズのジノ・ヴァインベルグがうちの学園に入ったらしいぜ。」
「何だ。そんな事か…」

ルルーシュは興味が失せ自分の席へ移動すると椅子に座った。

「おいおい〜ルルーシュ、驚かないのか?」

その後をリヴァルが追う。

「驚くも何もさっきまで学園を案内していたんだからな。」
「えぇ!?何々?お前ら知り合いなわけ?」

驚いたのはリヴァルの方だった。

「あぁ。ジノはスザクの友達なんだ。それで知り合った。」
「なるほどね。」
「席に着けよ。HRを始めるぞ。」

担任の教師が教室へ入って来たので話は中断された。

「また後で。」
「あぁ。」

リヴァルは自分の席へと急いで戻った。






「ルルーシュ先輩〜。お昼一緒しましょ〜よ。」
「ジ、ジノ!」

お昼休み、ジノは2年の教室までルルーシュを訪ねてやってきた。

「おッ!君がジノ君だね?いやぁ〜背も高いし、ルックスもいい。女の子が放っておかないだろ?」
「先輩は?ルルーシュ先輩の友達?」
「こいつはリヴァル。悪友みたいなもんだ。それよりジノはお弁当か何か持ってきてるのか?」

隣でリヴァルが酷いとか呟いたのをルルーシュは無視した。

「食堂とか無いの?私はルルーシュ先輩と食べたいだけなんだけど…」
「食堂はいつも人が多いんだ。俺は好きじゃない。」
「じゃあ、購買でパン買って別の場所で食べようぜ。」

ジノはそう言うとルルーシュの手を引っ張って行く。

「リヴァル。悪いがそう言う事だから、また今度でいいか?」
「了〜解。体育あるからって昼からサボんなよ〜」
「分かってる。気が向いたら出るよ。」






廊下に出てもまだ手を引くジノにルルーシュは恥ずかしいからと手を離す。

「先輩〜。別にいいじゃん。」
「俺は目立ちたく無いんだ。お前といるってだけで目立ってるんだからな。」
「そぉかなぁ?半分は先輩目当ての視線だと思うけど。」

ジノは周りをキョロキョロと見渡し、視線を向ける女の子に手を振る。
キャーとか言いながら女の子が頬を染めている。

ルルーシュは呆れたため息をついた。

「ジノ…サービス精神旺盛なのは分かるが、学園の中ではそんな事はしなくていいんだ。」
「そうなのか?でも、レディに失礼だから。」

とジノは相変わらず愛想を振り撒いていた。

貴族だから仕方ないんだろうな。
庶民の生活スタイルを理解するにはもう少し時間がかかるのだろう。
とルルーシュは自分を納得させた。






「ルルーシュ先輩。これ何?」
「あぁそれは揚げパンと言って日本の定番だな。」

食堂の隣の購買に置いてあるパンに瞳を輝かせて片っ端からルルーシュにジノは尋ねていた。

「って事は揚げてあんのか?中には何か入ってんの?」
「一般的にはあんこが入っている。もうそれくらいでいんじゃないか?」
「えぇ〜足りるかな?」

ジノは両手いっぱいに選んだパンを抱えている。

「足りなければ俺の弁当を食えばいい。」
「ルルーシュ先輩の手づくり?いいのか?」

ジノは更に瞳を輝かせた。

「あぁ。いれば分けてやる。だから早く支払いを済ませて来い。」
「はいッ!」

ジノは勢いよく受付へと走って行った。

「変な奴。」

ルルーシュは呟いて笑った。



ジノの支払いが終え、二人で屋上へと上がる。
本来はロックが掛かっていて立入禁止になっているが、ルルーシュはロックを解除して扉を開けた。

「ルルーシュ先輩、いつもやってんの?」
「たまにな。」

今日は天気も良く、屋上は暖かかった。

「誰も来ないし、のんびり出来るから屋上は好きなんだ。」
「じゃあ私もお気に入りの場所にする。これからは一緒にお昼しようぜ。ルルーシュ先輩。」

ルルーシュは少し戸惑った顔をジノへ向けた。

「ジノ、まだ入学したばかりなんだし、クラスメイトと打ち解けた方がいんじゃないのか?」
「何で?心配してくれて嬉しいけど、私はルルーシュ先輩と居たいんだ。」

ジノは真摯な瞳をルルーシュに向けた。

「ジノ…」

ルルーシュはこの間の事もあり複雑な思いで瞳を逸らした。

「さぁ、先輩食べようぜ。時間が無くなっちゃう。」
「あ、あぁ…そうだな。食べようか。」

二人でお互いの話をしながら昼休みを過ごした。

「ルルーシュ先輩のご飯美味しかったぁ〜。私の妻に迎えたいくらいだ。」
「大袈裟だ。お前の家にはシェフがいるだろうに。」
「ルルーシュ先輩の方が美味しいんだもん。今度食べに行っていい?」

ジノは身を乗り出してルルーシュに力説した。

シェフの料理は確かに美味しい。
けど、ルルーシュの料理には愛情を感じた。
それがよりルルーシュの料理を美味しくさせているんだな。とジノは思う。


「変な奴。食べたくなったら言えばいい。好きな料理も言ってくれれば準備する。」

ルルーシュはジノに負け笑った。

「約束だかんな。」
「あぁ。ただし不味くても文句言うなよ。」
「もちろん!楽しみにしてる。」

ジノはルルーシュの肩に腕を回す。
いつもスザクにするみたいにじゃなく優しくね。

「だから、ジノは大袈裟なんだよ。」

ルルーシュは口では呆れたように言うが表情は柔らかいものだった。



そこに午後の授業開始5分前を知らせるチャイムが鳴った。

「ルルーシュ先輩、授業始まるぜ?」
「あぁ、俺はいいんだ。授業遅れるなよ。」
「何なに?サボんの?じゃあ、私も一緒に。」
「駄目だ。お前はちゃんと出ろ。」

ルルーシュはジノを立たせ背中を押して屋上から追い出した。

「じゃあ、また明日一緒に昼休み過ごす事!約束な!」
「仕方ないな。じゃあちゃんと勉強して来いよ。」

「はぁ〜〜い♪」

ジノはルルーシュに手を振って階段を降りて行った。



次の日もその次の日も…最近では毎日の様に昼休みをジノとルルーシュは一緒に過ごしていた。
軍務がある日でも昼休みだけはジノはなるべく学園に通っていた。
それはルルーシュの知らない事であったのだが。



今日もいつものようにお昼を済ませ、ジノを追い出し、ルルーシュは一人サボっていた。

「さて…本でも読むか。」

ルルーシュは本を出すと、栞を挟んでいた頁を開くと本を読み始めた。

小春日和で陽射しも暖かくなっていた。

「っと、忘れ物!ルルーシュまだいるかな?」

教室の前まで来たジノは屋上へ忘れ物をした事に気付き来た道を引き返した。

「良かったぁ〜まだ鍵開いてた。」

屋上の扉を開けてジノはほほえましい光景に双眸を細めた。
音を立てないようにルルーシュに近づき顔を覗き込む。

頬にそっと触れる。まだ暖かいとはいえ初春。
ルルーシュの頬は冷たくなっていた。

「風邪…引くぜ。」

起こさないように小さな声で声を掛け、ジノは上着をルルーシュに掛けると横へ座り込んだ。
ルルーシュがジノの肩へ頭を預けてきた。

「やばい…可愛いんだけど…」

ジノは肩に感じるルルーシュの体温に温もりを感じた。

ルルーシュって男なんだよな…
こんなにも人を愛おしいと感じた事も、人の温もりを心地よいと感じた事は無かった。