「ジノ!」

校門の前に少し派手な服を着た(ジノいわく貴族では普通らしい)ジノが立っていた。

「よぉ!スザク。」

ジノが笑って手を振る。

「待った?」
「い〜や。今来たとこ。彼女が…」
「そうだよ。君の一目惚れの相手。」

ジノは地面に片膝を付きルルーシュの左手を取ると甲へ口づけを落とす。

「はじめまして。私はジノ・ヴァインベルグ。来てくれて嬉しいよ。ありがとう。」

ルルーシュは内心の動揺を悟られないように微笑む。

「はじめまして。私はルルーシュ・ランペルージ。よろしく。」
「よろしく、ルルーシュ。綺麗な名前だな。」

ジノが膝を着いたまま微笑む。

「ジノ。彼女が困ってるだろ?手、離せよ。」
「おっと失礼。」

スザクがジノを引っ張り少し離れたとこへ連れていく。

「ジノ、彼女は貴族じゃないんだからあぁいうのに慣れて無いんだ。後、声が低いのがコンプレックスみたいだから触れ無いであげてくれない?」
「分かったよ。でも、想像以上に綺麗だな。びっくりしたよ。」
「まぁ…ね。」

スザクは曖昧に返事を返した。
ジノはそれに気付いた素振りを見せずルルーシュを見つめていた。

「なぁスザク。食事の後2人きりで出掛けて大丈夫か?」
「さぁ…彼女に確認してみてよ。」
「そりゃそうだ。スザク、サンキュ。」



ルルーシュはスザクがジノを引きはがしてくれてホッと息をついた。

まさか貴族だったとは…計算外だな。
ナナリーのように振る舞えば大丈夫だってスザクには言われたが…無理だ。
いや…俺は出来る!やってやろうじゃないか!


貴族嫌いなルルーシュは変に燃えていた。



「じゃあランチでも行こうか。」

ジノとスザクはルルーシュが変に燃えていると知らずに戻ってきた。

「私が予約した店なんだけどフレンチでいいかい?口に合えばいいんだけど…」
「はい。」
「じゃあ行こうか。」

ジノは待たせてあったリムジンを呼ぶと3人で乗り込みレストランへと向かった。

「スザクとルルーシュっていつ知り合ったんだ?スザクがルルーシュの事”大切な親友”って言ってたから。ほら、珍しい組み合わせだなって思って。」
「あぁ、スザクとは10歳の時に留学で日本へ来ていた頃に出会ったんです。」
「あの頃はまだ日本とブリタニアは中立国という関係だったからね。僕の家に1年位居たのかな?」

ジノは納得して頷く。

「そうだったのか。ルルーシュはずっとエリア11に居たの?」
「はい。帰国間際に戦争が始まってしまって…本国に帰れなかったんです。」
「そっか。大変だったんだな。」

どうしたんだろ?ルルーシュ…何かやけに乗り気みたいだけど…

スザクは出掛ける前のルルーシュと様子が違う事を不思議に思いながら二人の会話を聞いていた。






20分位走ったところで車は音もなく停まった。

「あぁ、着いたみたいだ。」

扉が開けられスザク、ジノの順番に下り、ジノはルルーシュをエスコートをする。

「あ、ありがとう。」

ルルーシュは慣れない扱いにぎこちなく微笑んだ。

「いらっしゃいませ。ヴァインベルグ卿。」

レストランのオーナー自ら3人を出迎えた。

「やぁ。今日も楽しみにしてるよ。」
「ありがとうございます。ではこちらへ。」

3人が案内されたのは一番奥の個室だった。

「ここだと落ち着けるかな、と思ったんだけど…どう?」
「とても素敵なお店ですね。」
「僕は何だか馴染めないや。」
「良かった。あぁ、ちょっと失礼。」

そう言うとジノは部屋から出ていった。

「さすがルルーシュ落ち着いてるね。僕なんかフレンチってだけで落ち着かないんだけど…」
「まぁこれでも皇族時代に作法やらを嫌になる程習わされているからな。お前もだろ?」
「いや…僕ってそういうの嫌いでちゃんとしてなかったから…」

スザクの声が小さくなっていく。

「大丈夫。落ち着いて食べれば心配する事じゃないさ。」
「そっか。君がそういうなら大丈夫かな。」

「悪い。待たせた。」

ジノが部屋へ戻ってくると料理が順番に運ばれてくる。
3人は談笑しながら食事を進め、最後のデザートが運ばれてきた。
イチゴのミルフィーユのアイス添えとクレームブリュレ。
どちらもルルーシュの好きな物だった。
無意識に笑顔になるルルーシュをジノは嬉しそうに見つめていた。

「ルルーシュの好きな物ばっかりだね。」

スザクが無邪気に言う。
ルルーシュはハッとしてジノを窺い見た。
表情からおそらくスザクからでも聞いてルルーシュの為に作らせたのだろうと分かる。

「そっか。ちょうど良かった。ここはデザートも美味しいから是非食べみて。」

が、ジノの見かけによらない紳士ぶりにルルーシュは気付かなかった振りをした。
ミルフィーユを一口口に入れて微笑むルルーシュ。

「うん。美味しい。」

味わって1個食べ終えた。

「良かったら私のケーキも食べる?」
「えっ!いや…でも…」

ルルーシュが迷っていると目の前にミルフィーユの上に乗っていたイチゴを差し出された。

「はい。」

ジノは女性が見たら卒倒しそうな笑顔でルルーシュに微笑む。

ルルーシュは恥ずかしいと思いながら、先程のイチゴの甘さを思い出し怖ず怖ずと口を開けた。
ぱくっとルルーシュの口の中へイチゴが消えていった。


そんな二人をスザクは絵になるなぁと見守っていた。


結局ルルーシュはジノにミルフィーユをもらい大満足でランチを終えた。

「ねぇ、ルルーシュ。時間があればこの後二人で出掛けない?」
「えっ?スザクは…?」

ルルーシュは不安げな表情でスザクを見る。

「ごめん。僕はこの後、軍務が入ってるんだ。ルルーシュが良ければ付き合ってあげてもらえないかな?」
「そうか。ではジノと一緒に行こう。」

スザクの奴め。覚えてろよ。次は卵焼きにワサビをたっぷり混ぜてやる。

内心でスザクへ文句を言いながら微笑った。



「じゃあ僕はここで。」
「スザク。今日はサンキュ。またな!」
「早く学校に来いよ。スザク。」

レストランの前でスザクは二人に別れの挨拶をした。

「うん。またね。ジノ、くれぐれも失礼の無いようにね!」


少し複雑な気持ちを胸に残しながら。