ピンポーン♪

玄関のチャイムが来客を告げる。
時刻は朝の8時。

こんな早くに誰だと不満を漏らしながらルルーシュは扉を開けた。

「ス、スザクッ!?」
「やぁ。ルルーシュ、おはよう。」

そこには早朝だというのに爽やかな笑顔のスザクが立っていた。

「あ、朝とは聞いていたが、こんなに早いとは思っていなくて…今、朝食中なんだ。良かったら食べるか?」
「いいのかい?ルルーシュのご飯久しぶりだ。」

ルルーシュはスザクを招き入れる。

「うちので良ければいつでも食べに来ればいい。事前に連絡をくれれば、お前の好きな和食も作ってやる。」
「うん。僕、ルルーシュが作る和食大好き。」

部屋に入るとナナリーが食事をしていた。

「スザクさん。おはようございます。」
「おはよう。ナナリー。」
「掛けて待っててくれ。すぐに準備をする。」

そういうとルルーシュはキッチンへ姿を消した。

「お久しぶりですね。最近はお忙しくされているのですか?」
「そうでもないんだけど、雑用の方が多くて。なかなか外に出れないんだ。」
「そうなんですか。でも、学校にも来て下さいね。お兄様も寂しがってるんですよ。」

ルルーシュに聞こえないようにナナリーが小さな声でスザクに告げる。

「そっか。僕も皆に会えなくて寂しいよ。でも、もうすぐ落ち着きそうだからまた学校にも顔を出すよ。」

「お待たせ。クラブサンドしか無かったから…卵焼き焼いたからこれも食べろよ。」
「うわぁ。僕の大好物。ありがと、ルルーシュ。」

それから3人で食事をしながら談話していた。

「失礼します。ナナリー様、病院のお時間です。さぁ行きましょう。」

そこへ咲世子がナナリーを迎えに来た。

「もうそんな時間なのですか?まだお話をしていたかったのに…」
「ナナリー、心配しなくてもまたスザクは来るから病院へ行っておいで。」
「そうだよ。身体の方が大事だからね。僕はまた遊びに来るから。」
「約束ですよ。」

「約束。」

スザクとナナリーは指切りをして笑い合った。

「それでは失礼致します。」

咲世子がナナリーの車椅子を押しながら部屋を出ていった。

「片付けをするからそこで待っててくれ。TV好きなの観てていいから。」

ルルーシュの洗いものが終わるまでスザクはTVを観ながら待っていた。
頭にはルル子がいて、内容は頭に入ってこなかった。

「すまない。待たせた。部屋へ行こうか。」

スザクは紙袋をたくさん提げてルルーシュの部屋へと一緒に移動した。

「それにしても大荷物だな。」
「ちょっと色々買い過ぎちゃって。」

服を買った後も化粧品とか色々買っていたら結構な量になっていた。

「ほら。座って。僕がメイクとかもするから。」
「で、出来るのか?」

ルルーシュは驚きを隠せない顔でスザクを見る。

「任せてよ!軍の忘年会とかの出し物で女装とかやってるからルルーシュよりは出来ると思うよ。」
「そうか。軍人も大変なんだな。じゃあ頼むよ。」

そう言ってルルーシュは大人しく椅子へ腰掛けた。

「でも、無理言ってごめんね。」

スザクはルルーシュのメイクを始めながら口を開いた。

「まったくだ。こんな事…一目惚れなど有り得ない話だ。」

あれほど嫌がっていたルルーシュが無理なお願いを聞いてくれた理由が気になっていたのだ。

「じゃあ何で…」
「スザク、その相手は”友達”なんだろ?」
「うん。それが?」

スザクは不思議そうな顔をしてルルーシュを見つめた。

「だからだよ。この馬鹿。」

「えッ?」

驚きでメイクブラシを落としそうになった。

「スザクに俺達以外で”友達”と呼べる相手が軍にいて安心したんだ。だから…」

ルルーシュは少し照れたように顔を反らす。

「ありがとう。ルルーシュ。」

シャーリーといいルルーシュといい何で皆そんなに優しいんだろう。

スザクは目頭が熱くなるのを感じた。

「じゃあ、僕が綺麗にしてあげるからね。」
「馬鹿。泣くか笑うかどっちかにしろ。」

ルルーシュが優しく微笑っていた。

「うん。ごめんね。ちょっと泣いたら笑うから。」

ルル子が見たいなんて思ってた自分が恥ずかしいや。
ルル子もルルーシュに変わりないんだもんな。

スザクは深呼吸をするとルルーシュのメイクを再開した。






「うん。出来た!ルルーシュ鏡見る?」
「いや…いい。俺は見ても嬉しくない。」
「そうかなぁ?綺麗に出来た自信があるんだけどな。」

スザクはふてた声をあげる。

「分かったから。服は準備して…あるだろうな。その荷物じゃ。」

床に置いてある紙袋へルルーシュは目をやった。

「僕が選んだんだ。会長と違って女の子服ってよく分かんなくて苦労したよ。」
「あの人はどうも俺をおもちゃにする事にかけては一流の仕事をするからな。」

まったく…とため息を漏らす。

「本当だよね。センスいいし、何より皆の事をよく分かって選んでるよね。」
「あぁ。でも、子供みたいな人だからな。」

クスッとルルーシュが微笑う。

「でも、素敵だ。」
「まぁな。会長のいいトコだし。ッて、スザク…服ってまさかこれか?」
「いけなかった?可愛いでしょ。」
「か、可愛いが…」

もっとパンツとかにしてくれれば良かったのに…
やはり乗るんじゃなかった。と後悔したルルーシュだった。

会長の選ぶドレスや露出の高い服に比べればまだましだと自分に言い聞かせてルルーシュは着替えた。

「おぉ。ルルーシュ!やっぱり君って綺麗だね。とっても似合ってるよ。」
「あまり嬉しくないな。」

淡い藤色のワンピースはパフスリーブになっていて、胸に大きめのリボンが付いていた。
黒のストッキングを履いてコートを羽織って準備完了。

「あッ。そうだ。」

紙袋からアクセサリーを取り出しルルーシュへ身に付けてもらう。

「さぁ。ルルーシュ出掛けようか。」

時計は既に11時半を指していた。