ルル子に似合う服を買わなきゃ。
スザクは浮足立っていた。
またルル子に会える。その事で頭がいっぱいだった。
「でも、どうしよ…」
ルルーシュにプレゼントする服を買わなくてはならない。
サイズは大体分かるにしても、どんな服がいいだろうか。
会長に相談すればルルーシュにぴったりの服を誂えてくれるだろう。
だが、それでは会長にバレてしまいルルーシュは一生ルル子にはなってくれないだろう。
それだけは絶対に避けたかった。
「アーニャ…」
ダメだ…ルル子はあんなミニなフリフリ着ちゃダメなんだ。
「あッ!」
閃いたスザクは携帯で連絡を取った。
「………。うん。ごめんね?じゃあ土曜の2時にショッピングモール前の時計台で。それじゃよろしくね。」
ルルーシュの服を選ぶという事は内緒で彼女に送る服をプレゼントするって事で付き合ってもらう事に成功した。
スザクは嬉しそうに笑うと携帯を閉じた。
「スザク君。こっち。」
時計台の前でスザクの姿を見つけ手を振る彼女がいた。
「やぁ、シャーリー。忙しいのにごめんね。」
「うぅん。ちょうど暇してたしいいの。彼女への誕生日プレゼント?」
「まぁそんなとこ。」
ニコニコとシャーリーがスザクの顔を覗き込む。
「でも良かった〜。スザク君って、いっつも距離置いてる感じだったから。私で良かったら相談乗るからね。」
スザクは素直なシャーリーの気持ちが嬉しかった。
ルルーシュの事があって一番に僕をイレブン扱いせずに受け入れてくれた。
彼女は何て寛容なんだろう。
「スザク…君?」
「あぁ。ごめん。本当にありがとう。」
「えっと…彼女のタイプは?見た目とか好みの物とか。」
シャーリーは目を輝かせているように見えた。
やっぱり女の子だなぁ。とスザクは苦笑した。
「えっと…そうだな。身長は僕より少し高くて、細身で長い黒髪。気品があるお嬢様って感じかな。」
「へぇ〜なんか意外。スザク君ってお嬢様とか好きにならないタイプかと思ってた。じゃあイメージは…女装したルルだね。」
スザクは女の勘みたいなものに驚く。
さすが女の子…鋭いなぁ。
でも、訳を話さずルル子に似合う服が決めれそうで良かった。
「そうだね。そんな感じかもしれないね。」
「じゃあ…こっちのお店だね。スザク君、行こっ。」
スザクはシャーリーに連れられショッピングモール内を歩き回った。
「シ、シャーリー?まだ見るの?」
10軒程回った時点でスザクは根を上げた。
「もぉ!スザク君は彼女に喜んでもらいたいんでしょ?」
「う、うん。」
シャーリーの気迫に押されスザクは頷く。
「じゃあ、ちゃんと選んであげなきゃダメだよ。女の子に服を贈るのって…とこれはいっか。とにかくちゃんと選ぼう。」
だって…自分の好みに染めたいって事でしょ。
スザク君ってそんな事考えて無さそうだけど、やっぱり男の子だもんね。
シャーリーはそんな事を考えながら次の店へ足を向けた。
「シャーリー。僕、ちょっと休憩してていいかな?女の子ばっかりの店に入るのってやっぱりきついや…」
「あ!そうだよね。ごめんね。じゃあルルに似合いそうな服探してみるから。」
「うん。頼むよ。」
シャーリーの背中を見送りスザクはモールの中にあるベンチへ腰掛けた。
「はぁ…」
女の子とのショッピングって結構きついな…
シャーリーはちょっとミーハーなとこがあるし…
でも、ルルーシュに似合う服を選んでるシャーリーは楽しそうだったなぁ。
やっぱりルルーシュが好きなんだ。
なんて事を考えながらスザクは周りを見渡した。
沢山のブリタニア人。日本人はほとんど見当たらない。
ここは日本なのに…
ふと視線を向けた先のショーウインドーがスザクの目に止まった。
「あれ…」
スザクはその店へと向かった。
マネキンが着ているワンピースがルルーシュに似合いそうだったのだ。
淡い藤色の膝丈のシフォンワンピースにブーツ、アイボリーのコート。
ワンピースの裾にはレースが付いていた。
ルルーシュが日本に来た当時を思い出す。
ヒラヒラの服ばっかで変だと思っていたあの頃。
皇族だからかと思っていたが、ブリタニアという国柄なのかもしれない。
「スザク君。それ、気に入ったの?」
他の店を見ていたシャーリーが声をかけてきた。
「春も近いし綺麗かなって。本当は濃い色の方が似合う気がするんだけど…」
「私もこれがいいと思うの。だって、スザク君自身が彼女に似合うって感じた服なんだから。ね?」
そっか…
この時僕は漸く気付いた。
シャーリーは何軒も回りたくて回ってたんじゃなくて僕がこれだって思える服があるまで何軒も付き合ってくれてたんだって事に。
「ありがとう。シャーリー。君に一緒に見てもらって良かった。」
「どう致しまして。喜んでくれるといいね。」
「うん。きっと喜んでくれるよ。」
スザクは店に入るとマネキンにコーディネートされていた服やブーツ、小物全てを購入した。
お礼にとシャーリーに夕食をご馳走した。
「シャーリーのおかげで本当に助かったよ。今日はありがとう。あ!この事、会長には内緒にしてて欲しいんだけど…」
「もう仕方ないなぁ。確かに会長にバレたら絶ッ対にネタにされるもんね。分かった。内緒にしておいてあげるね。」
「助かるよ。デザート何でも頼んでいいからね。」
じゃあと言ってシャーリーは2つデザートを頼んだ。
こんなにもいいコなのにルルーシュって本当に鈍感なんだな…
まぁそれがルルーシュらしいとこなんだけどね。
いよいよ明日ルル子に会える。
ルルーシュが聞いたら憤慨しそうな事を思い浮かべていた。