「あら!ジノったら手強いわね〜♪」

各部の報告を聞きながらミレイは楽しそうに言う。

「そぉこなくっちゃ♪ね、スザク?」
「いや…僕は…」
「ミレイさん。あまりお兄様をいじめないで下さいね。」

珍しくナナリーがミレイに意見する。

「いじめてんじゃないの。ルルーシュと遊んでんのよ♪ナナちゃん。」
「スザクさん。私の為にお兄様の帽子を持って来てはいただけませんか?」
「ナナリー。でも、君が…」

ナナリーを狙う輩も少なくはない。
ナナリーを置いて来たとなればルルーシュが憤慨するのは目に見えている。

「スザクさん。お願いします。私なら大丈夫です。咲世子さんが守って下さいますから。」
「スザク!ナナちゃんの身の安全は私が保障するからいってきなさい!」
「会長?」

スザクは驚いてミレイを見る。

「ほ〜ら。早くしなさい!ナナちゃんのお願いなのよ!」
「スザクさん、お願いします。」
「分かったよ。ナナリー。君の為にルルーシュの帽子を奪ってくるから待ってて。」

スザクはナナリーの手を握りしめ咲世子に託すと部屋を出て行った。


ふ、ふ〜ん。とミレイが含み笑いをする。

「ジノとスザク。どちらがルルちゃんに相応しい騎士かはっきりさせたいのね?」
「私はそんなつもりじゃ…」
「でもナナちゃんはスザクの味方なのね?」

ナナリーは何も言わず顔を反らした。

「私はお兄様の味方です。」
「ごめん、ナナちゃん。でも、怒らないでね。」
「はい。これが最後だと思うと寂しくて。私も参加したくなっちゃったんです。だから怒ってなんていません。」

ナナリーはミレイの手を握ると微笑んだ。

「ありがと。ナナちゃん。」

ミレイもナナリーの手を握り返した。

「咲世子、ナナちゃんをお願いね。」
「かしこまりました。ミレイ様。」

咲世子はナナリーの車イスを押して部屋から出て行った。


『これからが勝負よ!さぁ各部もっと動きなさぁい!』


面白くなってきたじゃない。
でも、ナナちゃんは本当にいい子に育ったわね。
ルルーシュ…


ミレイはルルーシュ兄妹と出会った日の事を思い出してそっと微笑んだ。






「ここでいいのか?」
「あぁ。下ろしてくれ。」

ジノは大切に抱えていたルルーシュを管理塔地下入口で下ろした。

「ここのロックを解除するのに5分はかかる。その間見張りを頼む。」
「イエス、マイロード。護り切ってみせるぜ。」

ルルーシュは頷くと機械を繋ぎ、ロックの解除に取り掛かった。
ジノは管理塔の出入口で敵を迎え撃っていた。

「ジノ・ヴァインベルグ!!覚悟ッ!」
「そんなんじゃ私を捕まえらんないぜ?」

ひょいっとかわすと怪我をさせない程度で気を失わせる。

「ふぅ〜一般市民にいいのかな?文句言うならミレイに言えよ。」

寝転がる生徒を前にジノは呟く。

「ルルーシュ先輩!そっちはどう?」
「おかげで後少しだ。こちらへ来い。」
「はぁ〜い。」

ジノはルルーシュの所へ向かう為に入口に背を向けた。

「ッ!?」

凄い殺気を感じジノは振り返る。

「ス…ザク?」

もの凄い勢いでこちらへ向かい走ってくる人影。

「ルルーシュ!スザクだ!何か知んねーけど凄い殺気を放ってる。」
「何?ナナリーを置いて来たのか?会長の仕業に違いない。ジノ早くこちらへ。」

ジノは入口に鍵をかけ、ルルーシュの元へ急ぐ。

「よし!開いた。中へ。」

ロックが解除され扉が開く。
ルルーシュとジノは素早く中へと入る。

ガツンッ。

閉まる扉にスザクは間一髪で手を隙間に入れた。

「ふんんんぅ〜ッ!!」

閉まる扉を開けようとスザクが力いっぱい踏ん張る。

「スザク…どうしてお前が?」

鬼気迫る表情のスザクにルルーシュは困惑した表情を向ける。

「まったく。スザク危ないぜ?」

ドスッ。

ジノはスザクを勢いよく蹴り飛ばした。

ガタンッ。

大きな音を立てて扉が閉まった。

「ジノ…何もあそこまでしなくても…」
「いーや。あれじゃ扉も壊れちまう。それにスザクはあんなんじゃ死なないぜ?」
「確かにそうだが…」

ルルーシュは心配そうに呟くと顔を伏せた。






「会長ッ!聞いて下さい!わ、私見ちゃったんです!」

バタンと大きな音をさせ、部屋へ入って来たシャーリーにミレイは驚いた。

「ちょっとどうしたのよ?シャーリー落ち着いて。」
「あ…すみません。何か慌てちゃって…」

シャーリーはミレイに言われ冷静さを取り戻した。

「で?あなたは何を見たの?」
「さっき水泳部でジノを止めるお色気作戦をしたんです!その時…」

シャーリーは複雑そうな顔をして俯いた。

「何があったのよ?」
「ルルの帽子に…騎士の紋章がついてたんです…」

は、は〜ん。ジノなかなかやるわね。

「会長〜強制カップルって同性もありなんですか?」
「あぁ…泣かないの。ルールはルールだから同性であろうが公認カップルよ。」
「そんなぁ〜会長なんとかして下さいよ〜」

シャーリーは床に崩れ落ちた。

「シャーリー…あなたが本気なようにジノも本気なの。強制カップルだとしても、一番大切なのはルルーシュの気持ちね。」
「は…ぃ。」
「でもルルーシュってばこういう事には頭が回らないのよね〜」

帽子が変わってる事にも気付いて無かったりして…
ルルーシュの事だから有り得るわね。






「ルルーシュ…先輩。」
「何だ?そんな真剣な顔して…」

ジノは真剣な眼差しをルルーシュへ向けていた。

「実は…」

ガタンッ!

「「ッ!!?」」

二人は驚いて音がした方へ顔を向ける。

「スザクッ!?」
「僕は…ナナリーに頼まれたんだ。だから…」

だからルルーシュの帽子を奪わなければならないんだ。

「スザク!どうしたんだ?」

ジノがルルーシュを匿うように立ちはだかった。
ジノの大きな背中にルルーシュはすっぽりと隠れてしまう。

「ナナリーがスザクに俺の帽子を取ってこいと命じたのか?」
「あぁ。だから僕は君の帽子を奪わなければならない。」

ルルーシュはナナリーの為なら帽子を差し出す事は分かっている。

「え…?」

ジノの背中から覗く帽子にジノの騎士の紋章がついているのがスザクには見えた。

「ジノ?どういう事だい?」
「スザク、待ってくれ。今からルルーシュ先輩に話すとこだったんだ。」
「何だ?」

ルルーシュは二人の会話が見えず困惑していた。

「ちょっと先輩と二人きりにしてくれよ。」
「分かった。後でまた来るよ。君がそこまで本気だったなんてね。」
「相手がスザクでも譲れないぜ?」

ジノは真剣な表情でスザクを見る。


予想外だったよ。

ジノ…君の気持ちも…



僕の気持ちも…



「また後で。」

スザクは壊れた扉を避けて外へと出て行った。