気づけば帝国最強と言われるナイト・オブ・ラウンズの3という地位まで上り詰めた。
別に皇帝の騎士になりたかったわけではない。
皇族に近づければルルーシュ様の事も何か掴めるかもしれないと考えた結果がこれだっただけだ。
ルルーシュ様をお護りしたい!!強くなりたい!!と願った結果、ジノは強くなった。名実共に。
神は見捨てなかったのだ。
胸にあるネックレスに服の上から触れる。
ルルーシュ様。ジノ・ヴァインベルグはあなた様のモノです。
「この度、ナイト・オブ・ラウンズにナンバーズが配属される事となった。皇帝陛下の決定である。」
「へぇ〜異例っすね。」
「イレブン。」
「おッ。アーニャも気になるのか?」
「別に。」
アーニャは携帯をいじりながら言う。
「そりゃそうだよな。強けりゃナンバーズとかなんて関係ないもんな!」
ジノはアハハと豪快に笑う。
「イレブンの枢木元首相の息子、枢木スザクと言うそうだ。ブラックリベリオンで戦果を挙げ、異例の昇格となったそうだ。明日からの配属となる。………………。」
ナイトオブワンの話はまだ続いていた。が、既にジノの頭には入ってこなかった。
枢木スザク…裏で、あのゼロを捕えて皇帝陛下へ差し出したとさえ言われている男。
ルルーシュ様が一緒にいたイレブンか。何か分かるかもしれない!絶対に掴んでみせる!!
「はじめまして。枢木スザクです。よろしくお願いします。」
翌日、枢木スザクの任命式の後ラウンズのメンバーに自己紹介等がなされた。
「私はナイトオブスリーのジノ・ヴァインベルグ。よろしくな。」
枢木スザクは周りに人を寄せ付けさせない。そんなオーラを放っていた。
何としても仲良くなって情報を引き出してやる!
幼少期のほんの僅かな時間過ごしただけのジノをスザクは覚えていなかった。
無理もない。3,4日滞在したとはいえほとんどルルーシュと過ごしていたジノの事をスザクはよく思っていなかった。
記憶から不要な人物として消されていても仕方がないだろう。
その方が変に検索されなくて都合が良かった。
それから事あるごとにスザクに声を掛け、共に行動するようになった。
スザクはナナリー総督の騎士となり、エリア11への赴任が決まっていたのだ。
ナナリー様が生きておられたならルルーシュ様が生きておられても不思議ではない。
可能性が広がる。そして、スザクが絡んでいるのは疑いようも無かった。
「よぉスザク。スザクって休みは何してんだ?」
「君は何故、僕に近づくんだ。」
スザクは警戒した眼差しをジノに向ける。
「何故って同じラウンズなんだし、そんなの理由なんているのか?」
「そう。ならいいんだけど。」
昔見たスザクは偉そうで、元気があってよく笑う奴だったと思う。
初めの頃よりは随分スザクの表情が出てくるようになったとジノは思う。
「僕は、学校に通ってるんだ。」
「学校、行きたい。」
「アーニャ!君、いつの間に?」
カシャ。という携帯独特のシャッター音がする。
スザクは驚いてジノの後ろに立つアーニャを見つめた。
「ずっと、居た。」
「私の背中に隠れてシャッターチャンス狙ってんだよな?」
「スザクの驚いた顔。貴重。」
「私も初めて見た。アーニャは神出鬼没だからな。変な写真取られないよーにな。」
ジノはスザクの首に腕を回しこっそりと耳打ちする。
「気をつける。アーニャ学校には行けないよ。」
「行きたい。」
アーニャは興味がある事には表情にこそ出さないが、異常なしつこさを発揮する。
それを知っているジノにはスザクの負けは見えていた。
「でも、任務だってあるし…」
「大丈夫。行ける。」
「だから…」
段々とスザクが押されている。
「スザク〜こういう時のアーニャには従った方が身の為だぜ。ブログに悪口書かれるんだぜ。」
ジノは笑いながらスザクに言う。
「分かったよ。アーニャ。今度、僕の歓迎会があるからそれを見に来るといい。」
渋々とスザクはアーニャに折れた。
「庶民の学校か〜。面白そうだから私も行かせてもらうよ。アーニャの保護者だし。な?」
「ジノの方が子供。」
「ジノ言われてるよ?大きな子供だってさ。」
スザクが楽しそうに笑った。
カシャ。またカメラのシャッター音がした。
「記録。」
「良かったな。アーニャ、スザクが笑ってくれて。」
こくんと頷くと、アーニャは携帯を打ち始めた。
ブログを更新しているのだろう。
「詳細はまた今度。僕は任務が入ってるから。」
「おう。じゃあまたな。」
スザクは部屋を出て行った。
「さてと、私も書類の作成をしなきゃな。アーニャは?」
「まだここにいる。」
「そっか。じゃあな。」
ジノも部屋を出、自室へと向かった。
歓迎会当日。ジノとアーニャはオフをもらい二人でエリア11へ来ていた。
「おぉすげ〜、なぁスザク何これ?」
「それは射的って言うんだ。銃で商品を狙って落としたら貰える。」
「スザク、これは?」
「アーニャ、それは綿菓子って言って砂糖を機械に入れて棒に巻きつけて食べるんだ。」
ミレイ会長が今日はスザクの歓迎会ということもあり、日本のお祭りみたいな趣向で屋台を出していた。
「スザク君。主役はこっちへって会長が呼んでるから。」
シャーリーがスザクを呼びに来た。
「ごめん。僕は行かなきゃ。二人とも楽しんで。」
スザクはシャーリーに手を引かれ連れて行かれた。
「なぁアーニャ。探索しようぜ。」
「それ、いい。」
「よし、そうと決まればゴー!」
校舎の中へ入ってみたり体育館を覗いてみたりジノとアーニャは色んな場所を見て回った。
「あっれ〜?ここどこだっけ?」
周りを見渡すと人がいなくなっていた。
「どうかしましたか?」
おぉ助かったと声の主を見てジノは固まった。
漆黒の髪に紫水晶の瞳。彼だ。とジノは確信した。
「いや〜道に迷っちゃって。」
「そうですか。見たところ部外者の方のようですが…」
ここは普段学生でさえあまり近寄らない場所なだけにルルーシュは不審な瞳で二人を見る。
「あぁ、私たちは枢木スザクの友達なんだ。」
ジノは賭けでスザクの名前を出してみる。
「スザクの。あいつは今日主役だからステージの裏でスタンバイしていると思いますよ。案内しましょうか?」
納得したようにルルーシュは頷く。
カシャ。
携帯のシャッター音がした。
「あなた、綺麗。」
「え?」
いきなりカメラで写真を撮られたルルーシュは困惑気味に眉を寄せる。
「アーニャ、ダメだろ。困ってるじゃないか。悪いな〜アーニャの趣味なんだ。」
「いえ…」
「兄さん!!」
そこへ少年が現れた。
「ロロ、そんなに慌てて何かあったのか?」
ルルーシュ様の弟?ナナリー様と歳が変わらないように見えるが…何かがおかしいと漠然に感じた。
「会長さんが呼んでるんだ。どうしても兄さんがいてくれなきゃダメだって。」
「そうか。ロロ、この方たちが迷ったそうなんだ。会場まで案内してあげてくれないか。」
「分かったよ。兄さん。」
ルルーシュ様が向ける慈愛に満ちた表情は、ナナリー様へと向けられていた表情だった。
ルルーシュ様は知らないのだろうか?
ナナリー様が総督となってこのエリア11を治められる事を…
「すみませんが、俺はここで。頼んだぞ、ロロ。」
「はい。」
ルルーシュは軽く頭を下げるとその場を去った。
こんなところにおられたのですね。ルルーシュ様。
あの様子だと私の事に気付かれていないようだった。
昔より随分と身長も伸びたし、気付かれなくて当たり前だと思いながら胸が苦しくなった。
誰だ。あれは…昔、約束を交わしたジノによく似ていた。
金髪に空のように蒼い瞳。子供の頃の話だ。そんなに都合よくいるはずがない。
街を歩く金髪の少年を見かけるたびにジノじゃないのかとついつい眼をやってしまいその度に、肩を落としていたものだ。
懐かしさに胸が苦しくなった。