「明日、日本へ帰ったら休暇を取ろうと思います。」
主要国首脳会談を終え部屋へ戻る際にナナリーが突然ゼロへ告げた。
「ゼロ、あなたも明日1日は自由にして下さい。」
「ですが…。」
ゼロはナナリーへ否定の色を示す。
「大丈夫です。私には咲世子さんが付いていますから。」
「そうですか。分かりました。では明日は自由にさせて頂きます。」
「はい。たまの休みですからゆっくり休んで下さいね。」
ナナリーは心からの笑みでゼロに語りかけた。
「ありがとうございます。では、失礼します。」
ナナリーを部屋の前まで送り室内の安全を確かめ、ゼロは礼をしその場を辞した。
「誕生日おめでとうございます。スザクさん。」
ナナリーはゼロの背中が見えなくなったのを確認するとそっと小さな声で呟いた。
ずっと呼びたくても呼べない名前をそっと大事そうに…。
「ナナリー様?どうかなさいましたか?」
部屋に中々入って来ないナナリーに咲世子が問いかけた。
「いえ。ちょっと昔の事を思い出していました。」
「そうですか。今日はアールグレイティーを淹れました。よろしければお茶にしませんか?」
「はい。それと明日ゼロに休みを取ってもらう事にしました。咲世子さん明日警護をお願いできますか?」
咲世子はナナリーの意図を酌み、笑顔で答えた。
「畏まりました。では、明日1日私がお供させて頂きます。」
休みなんていつぶりだろう。
自分には休みなんて必要が無いと思っていた。
あれから…ゼロになってから…自分に休息を与えなかった。
立ち止まってしまうと自分を保て無いと分かっていたから。
ルルーシュを求めてしまう事が分かっていたから…。
でも、今はルルーシュが居る。
この状況がいつまで続くか分からないけれど…
「そうだ。ルルーシュに電話しなきゃ!」
意気揚々とかけた電話に出たのはC.C.だった。
恩人だと分かっていても気持ちのいいものではない。
C.C.もルルーシュに少なからず好意を寄せている人物だからだ。
『明日必ず来い』と切られた電話。
行くからって伝えたかったのに…切られちゃったし…
ちゃんと伝えてくれんのかな?
日本に戻ったらすぐにルルーシュの元へ行こう。
そう心に誓うと帰国準備を済ませ眠りについたのだった。
目が覚めてみるとC.C.の手紙が服へ貼られていた。
『ピザのレシピを忘れるな。』
「あいつ…いつの間に帰ったんだ?」
知らない間に眠ってしまった事を思い出しルルーシュはひとりごちた。
昼食を軽く済ませ、昨日焼いたケーキにデコレーションを施した。
満足のいく出来栄えに頷き冷蔵庫へ入れる。
後は…仕方ない…とパソコンの電源を入れ、レシピを打ち始めた。
なるべく事細かいところまで書いておいた。
作らされる人がC.C.によって害を受けない為にだ。
「まったく…」
どうしてあんなにもピザの事となると煩いんだろうか?
ルルーシュは理解出来ずに頭を傾げた。
とその時、地下の入口が開く音がして下へと向かう。
「スザク?」
「やぁ、ルルーシュ。会いたかったよ。」
言うより早いスザクの腕がルルーシュを抱きしめた。
「どうした?今日は早かったじゃないか?」
「やっぱり…C.C.から何も聞いてない?」
スザクはがっくりと肩を落とした。
「あぁ。俺が寝てしまっている間に帰ったみたいだから…」
「C.C.は何しに来てたの?」
これはちょっとした嫉妬心。
「何しにって訳じゃ…。偶然買い物に出かけた時に会ってピザを作らされたくらいだが…」
「そう。ならいいんだけど。」
「どうしたんだ?いつもの事じゃないか?」
ルルーシュは不思議そうに首を傾げた。
そんな可愛いルルーシュにスザクはキスをする。
「ん…ッ。ふ…ぅ。」
深くなる口づけにルルーシュが甘い声を漏らす。
チュッと音を立てて離れるスザクの口唇。
「ぁ…ッ。」
寂しげに漏れた自分の吐息に真っ赤に頬を染めるルルーシュ。
「ほわぁッ!!」
そんなルルーシュをスザクは軽々と抱えあげると寝室へと向かう。
「ごめん、ルルーシュ。そんな可愛い事されたら我慢できないよ。2日もお預けだったしね。」
「ば、馬鹿者!!待て、落ち着け。」
慌てるルルーシュを余所にスザクは寝室の扉を開けベッドに下ろした。
「ごめん。本当はこんな性急な事したく無いんだけど…」
君があんまりにも可愛いから…ルルーシュの耳元で囁き耳朶を愛撫する。
「ん…あッ!スザク…」
耳の中へ侵入する舌がぴちゃぴちゃと音を立てて聴覚を犯していく。
耳朶から首筋へかけてスザクの舌が滑らかなルルーシュの肌を伝う。
「やッ…んんぅ…ッ。」
「ここ…まだ痕残ってるね。」
まだ色濃く残る首筋のキスマークを見つけてスザクは嬉しそうに同じ箇所をきつく吸い上げた。
「やッ!!痛ッ…」
白いルルーシュの肌に更に色濃い所有の華が咲いた。
「痛かった?ごめんね。ねぇ、ルルーシュ?僕にもつけてくれない?」
「えッ?」
一瞬理解が出来ず固まったルルーシュが理解した途端に顔を真っ赤にして固まった。
「僕にもルルーシュのモノだっていう証。」
改めて自分に付けられたキスマークを所有の証だと言われたようで恥ずかしいながらも嬉しさが込み上げる。
うん。とだけ小さく頷いておずおずとスザクの首元へ舌を這わす。
「…ッ、ルルーシュ。」
優しく名前を呼んで頭を撫でる。
ルルーシュは思い切ってスザクの首筋へ吸いついた。
「ど、どうだ?」
ルルーシュは恥ずかしそうにスザクを見上げた。
「って言われても僕には見えないよ。」
スザクはくすっと笑う。
「ありがとう、ルルーシュ。」
今度はちゅっと軽く口づけを交わす。
スザクの蕩けるような笑顔にルルーシュも嬉しくて笑みが零れる。
今この瞬間に幸せが溢れていた。
明日を…
幸せを…
望んだことは決して間違いでは無かった。
「スザク…スザク…ッ。」
名前を呼ぶルルーシュの瞳に涙が溢れていた。
「ルルーシュ?どうしたの?」
突然の事におろおろするスザク。
「俺…幸せなんだ。ありがとう、スザク。」
「僕もだよ。ルルーシュ。」
お互いの温もりを確かめるように抱きしめ合った。