「会長…」

ルルーシュは3年生の卒業式で送辞を読み上げた。

その後で知った真実…

「実はぁ〜単位足りて無かったのよねん♪て事で来年もよろしく!ルルーシュ。」
「はぁ…。」

ルルーシュはえへへと笑いながらウインクをするミレイにため息をついた。

「あ!でも、単位が取れ次第卒業だから…生徒会長はもちろんルルーシュ、貴方よ。」
「俺ですか…俺なんかよりスザクやリヴァルの方がいいんじゃないですか?」

ルルーシュは面倒な事はご免だと頭を左右に振る。

「駄目よ。知ってるでしょ?うちのルールくらい。」
「もちろん、知ってますけど…」

アッシュフォードでは、前生徒会長が卒業式の日に次期生徒会長を指名するのが伝統なのだ。

「じゃあ決まり!男なんだからしのごの言わないでやりなさい!」
「仕方ないですね。でも、俺が会長になるからには無茶なイベントはしませんから。」

すかさずルルーシュはミレイに釘を刺す。

「ちょっと待ったぁ〜!何それ?そんなんじゃ全然面白くないじゃない!」
「俺は面白くなくて結構。皆にはのんびりと学生生活を過ごしてもらいますよ。」

ルルーシュはにっこりと笑う。

「駄目〜そんなの我慢出来ない!やっぱり私!私がもう1年会長をするッ!」
「何を無茶言ってるんですか。ちゃんと卒業して下さいよ。」
「嫌〜い〜や〜!私がするのぉ!」

駄々をこね始めたミレイにルルーシュは頭を押さえる。

はぁ…とため息をつくとルルーシュは観念し口を開いた。

「分かりました。そこまで言うなら今まで通り会長がして下さい。確かに会長が会長じゃないと変ですよね。」
「そぉ?やっぱり?じゃあ今年も副会長はルルーシュお願いねッ♪」
「はいはい。分かりました。」

立ち直りの早いミレイに苦笑いなルルーシュだった。






春休みに入ると学園にいるのは熱心な部活と新学期の準備に追われる生徒会となる。
新学期早々のイベントと言えば入学式だ。
今日も生徒会室では入学式の準備に追われていた。

「今年は、サプライズゲストが来るから皆失礼の無いようにね。」

来賓の挨拶の順番を決めている時にミレイがそう言えば…と報告する。

「サプライズゲスト?会長、誰が来るんですか?」
「ふ、ふ、ふ。それは当日のお楽しみ♪」

シャーリーの質問にミレイは人差し指を唇に当て、ウィンクをする。

「会長…それじゃあ準備に困りますよ。誰か教えてくれてもいいじゃないですか。」
「だって、内緒にしてくれってお願いされてるんだもん。あぁ〜ん!私だって言いたいけどダメなの〜。」

ミレイは言いたくてたまらない衝動をジェスチャーで表現しながら言う。

「それ程のVIPと言う事なんですね?」

ルルーシュの言葉にミレイは頷く。

「そうね。そう思って準備を進めてちょうだい。」
「分かりました。その予定で来賓の挨拶や席の順番を考えますよ。」

ルルーシュは目の前の書類にVIPゲストをAと仮定して案を考え始めた。

「悪い!遅くなった!」

バタバタと騒々しくジノが生徒会室の扉を開けて入ってきた。

「ジノ。忙しいなら無理しなくていいんだぞ?」

ルルーシュは多忙なジノを気遣って声をかける。

「大丈夫!私だって生徒会のメンバーだし。今日の午前中はオフなんだ。ちょっと寝坊しちまって。」
「そうか…ならいいが。あまり無理しないでくれ。もしもの事があっては遅いからな。」

ルルーシュは照れ隠しでジノから顔を反らす。

「ルルーシュ〜。」

ルルーシュが自分を心配してくれているのが嬉しくてジノはルルーシュを抱きしめた。

「うわッ!ジノ!離せ!」
「だってそんな可愛い事言われて放っとけないよ〜。」

ん〜っとキスを迫るジノ。

パコーンッ!!

丸めた本でミレイがジノの頭を叩く。

「はいはい。そこまで。イチャつくなら他所でやってちょうだい。」
「ミレイ…痛い。」

今のうちとルルーシュはジノの腕の中から逃げ出した。
ホッと安堵のため息をつく。

実はキューピッドの日以降、度々ジノから過度のスキンシップを受けている。
もちろんジノの事は嫌いでは無い。
寧ろ…好き…な方だと思う。

ルルーシュはジノをちらっと見遣る。
それに気付いたジノがウインクで返してくる。

「馬鹿…」

聞こえない程小さな声でルルーシュが呟いた。

「ほ〜ら!ぼーっとしてないで仕事!仕事!明日までに仕上げなきゃなんないんだからね!」
「「「「はーい。」」」」

ミレイの喝に一同は書類へと取り掛かった。

「なぁルルーシュ。このAって誰だ?」

ルルーシュの隣に腰掛けたジノが書類を覗き込む。

「あぁ…会長から教えてもらえなかったんだが…VIPゲストらしいんだ。」
「へぇ〜アッシュフォードも派手にやるねぇ。」
「まぁラウンズが二人居る時点で十分派手だと思うがな。」

ルルーシュの言葉にジノは笑いながら

「確かに、言えてるな。」

と楽しそうに言う。

「とにかく当日のお楽しみだ。ジノも書類手伝ってくれ。」
「了解。」

ジノも渡された書類に取り掛かった。

昼前には書類はほぼ出来上がっていた。

「皆!お疲れ様。後は明日もう一回チェックしたら先生に提出するわ。よって、今日は解さ〜ん!」

ミレイの言葉に帰り支度を始めた。

「ジノ、スザクに入学式に生徒会の役員として来れるか確認しておいて貰えないか?」
「了解。スザクに会ったら聞いておくよ。明日も生徒会集まるんだろ?」
「あぁ、会長が最後の調整をするって言ってたからな。」

ジノはやっぱりと呟くと、肩を落とした。

「明日は任務が入ってて来られないんだ。ルルーシュに会えないなんて本当に残念だ。」
「いつでも会えるだろ?それよりスザクの件頼んだぞ。」

それだけ言うとルルーシュはミレイの所へ行ってしまった。

ルルーシュにとったら私の事はそれよりで済まされてしまうのか…
ジノは寂しげに笑うと

「失礼しまーす!」

とカラ元気で挨拶をすると生徒会室から出て行った。